【書評】『公共R不動産のプロジェクトスタディ: 公民連携のしくみとデザイン』〜あなたのすみたいまちはどんなまち?
公共R不動産のプロジェクトスタディ: 公民連携のしくみとデザイン
- 作者: 馬場正尊,飯石藍,菊地マリエ,松田東子,加藤優一,塩津友理,清水襟子,公共R不動産
- 出版社/メーカー: 学芸出版社
- 発売日: 2018/06/08
- メディア: 単行本(ソフトカバー)
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読みました。
公共R不動産という素敵な会社が手がけた公共空間の活用プロジェクトやら、国内外のさまざまな事例が掲載されていて、「資金調達とか、小難しい話はわかんないんだけど、とにかく行ってみてー」となる本です。
▼将来の暮らし方を想像したことは?
日本って今ひとつ、公共空間を活用した取り組みが遅れているような気がします。
特に都心部などは、狭小な土地を奪い合うように切り刻んでいった結果、見事なまでに「良い」空間とか、「良い」景観とかいった概念がすっぽり抜け落ち、とにかく「詰め込むだけ詰め込んじゃえ」感があります。
そうした空間において、都心の人々は、ライフスタイルよりも、ライフサバイブといいますか、なんちゅうか日々の暮らしをサバイブしていくような鬼気迫るものを感じます。
とはいえ将来的に、日本人はもっとモノ消費よりもコト消費(しかもお金がかからないコト消費)、つまりライフスタイルに目を向けた生活に傾斜していくと私は考えています。
その理由は単純で、将来的な増税等々により、可処分所得の減によって、物が買えなくなるからです。
国は、搾り取れるところは徹底的に搾り取るスタンスなので、特に社会のミドルからロワーサイドに属している人々は、生活が苦しくなるのは簡単に予見できるような気がします。
そうすると、ショッピングなどに消費されていた時間がどこで消費されるか?
公園など、限りなく安く使える公共空間・公共施設ではないでしょうか?
つまり、休日は近所の公園でまったり過ごす、みたいなライフスタイルに、ある意味不可避的に人々の行動が収斂していくのではないかと考えています。
消費行動ではなく、もっと生活の質に目を向けた(やや後ろ向きな理由ながら)ライフスタイルへの変化。
そうなると、公共空間の重要性というものは、ますます問われるようになるはずです。
と、まぁこの見立て、「なんか冒頭の本に絡めて強引じゃね」と言われても仕方ないかもしれませんが、私は日頃からそう考えているんです。
▼公共空間を巡る問題はたくさん
ところが、その公共施設・空間に関してもいろいろな問題を孕んでいます。
とりわけホットなのが「公共施設再編問題」。
日本全国、1970年代の高度成長期に建てられた公共施設が現在、軒並老朽化し、多くの自治体が改修するか潰すかなどの決断を迫られています。
改修はとにかく金がかかるし、潰せば潰すで、利用している住民からの反発がある。
悩みは尽きないと思います。
あとは例えば公園の問題なんかもあると思います。
誰も使っておらず、草がボーボーの公園とか、身近にありませんでしょうか?
ああした施設も悩ましい。
自治体としてはきちんと手入れをして、みんなに使ってもらいたいけど、維持補修をする金がない。だから放置される。(もちろん熱意ある住人によって自主的にきれいに維持されている公園もあったりはしますが)
▼今こそまさに公共空間の曲がり角
まぁこんな感じで、「公共施設・空間」と「金」と「担い手」を巡る問題に今の各自治体は汲々としているわけですが、まさにターニングポイントでもあると思います。
問題が全国の自治体でぶちあがっている今こそ、将来を見据えた、持続可能な公共空間づくりが必要になります。
ところがここが悩ましいところなのですが、国政にしろ地方政治にしろ、彼ら官憲に任すと大抵がとんでもないことになるわけです。
そうならないためには、住人や民間企業も含め、いろいろな目線を絡めて物事を進めていくことが欠かせないでしょう。
そして、前置きが非常に長くなってしまったのですが、本書『公共R不動産のプロジェクトスタディ』は、そうした「未来のまちづくりを皆で共有して行こう」というテーマを(おそらく)含んでおり、自治体やまちづくり関係の人だけでなく、さまざまな人が目を通す価値がある本になっています。
▼現実は大変だけども、よいまちづくりはいろんな人の熱意から
もちろん現実は難しい部分もあります。
きちんと住民の声を聞く自治体もあれば、行政主導で勝手に進める自治体も現実にはあります(後者は本当はあってはならぬことです) 。
特に、後者のような自治体と正攻法でアクションを起こそうと思った場合、彼らをハンドリングするのは並大抵のスキルでは出来ません。
というのも、彼らのほとんどが「現状維持できないと死ぬ奇病」という風土病に罹患しているので、彼らのケアをしながら物事を進めるという、Very Hardモードの苦行が待っているからです。
一応、本書でも、そういう場合は、「勝手に物事を始めちゃう」「試行でやっていく」とかさまざまなテクニックが記載されているので、アクションを起こしたい社会起業家、はたまた自治体内部の実務家にとっても学ぶべき部分があります。
いろいろ壁はありますが、結局、「何がしたいか」という熱意が大事なんでしょうね。
起点はいつもそこからだと思います。
まぁまぁ、ともあれ、この本を読んでみて、自分が住んでいる街で、自分がどんな暮らしをしていきたいか、という想像をいろんな人が膨らましてくれると嬉しいですね(作者の言みたいになってしまいました)。
面白い本でした。
読み返すと、書評というよりも雑記になっていました。。。
了