シコウノイッタン

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【映画】『男はつらいよ お帰り 寅さん』〜そして、さよなら、寅さん〜


映画『男はつらいよ お帰り 寅さん』予告映像

【目次】

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▼ついに寅さんが帰ってきた?

見てきました。
思ったことをつらつらと。
公開中の作品なので詳しく内容には触れませんが、察しの良い人は筋が分かってしまうかもしれませんのでご注意ください。

▼超ざっくりあらすじ

第48作『男はつらいよ 紅の花』から、数十年。
みな、それぞれ歳を重ねた「今」が舞台。
小説家になった満男が、初恋の人・泉と再会する、というのが話のメインとなります。

▼ある意味、安定のいつもの「男はつらいよ

イベントで、山田監督が「僕も当初、思ってもいない、なんとも不思議な物語が出来た。知らぬ間にこんな展開になっちゃった」と語っていましたので、今作はそれなりにヒネった話を想定していました。

しかし、蓋を開けてみれば、「これ以外の解はないよね」というオーソドックスなものであったような気がします。

そして、このオーソドックスさが曲者です。

劇中、これまでの名場面が、現代の風景とところどころクロスオーバーします。
このクロスオーバーにやられて、私は何回も涙してしまいましたが、逆を言うと、寅さんを知らない人がこの作品を見るのは結構ハードルが高いような気がする。

私は、さくらが何回も寅さんを見送った柴又駅の現代と過去が重なる場面で、特に涙してしまいましたが、思い入れのない人にはちょっと理解不能でしょうね。

▼非常に良かった経年感と描写

内容はとかく、いろんな人が歳をとって、それも妙にリアルな歳のとり方(体型の崩れとか)をしていることに、ファンの感情は様々な形で揺さぶられることでしょう。
でもあの描き方は良かった。

そして、とらやも満男の家も、どの舞台も小汚く(褒め言葉)、人の息の通った、生生しさがあって、あれも良かった。

そこに不可逆で時に残酷な時間の重みを感じることができたから。

(個人的には、三平ちゃんが、今もシュッとしてて素敵だなぁと思いました。)

でも、それも結局シリーズ全部見てるから感じる感想で、人によっては『家族はつらいよ』と何が違うのよ?といわれてしまうかもしれない。

▼そして、『男はつらいよ』は完結した。

多くのことが描かれません。
亡くなってしまった人、居なくなってしまった人(あと、キャスティングに変更のあった寺尾聰…)、そこには沢山の「隙間」が開いています。

我々にできるのは、そのあえて開けられた「隙間」に想像力を詰め込んで、「男はつらいよ」という作品を、それぞれの解釈で完結させていくことだけです。


でも、これで本当に最後だと思うと、寂しい。
あのヒーローであり、アンチヒーローでもあり、トラブルメーカーでもあり、ときにロマンティストであり、我々を笑いと冷笑と苦笑に包みながら、そして、それでもまた「会いたい」と思わせてくれる寅さんが居なくなってしまったことがこの上なく悲しい。


今日は徳永英明を聞こう。

了。