シコウノイッタン

読んだ本や、映画の話など、偏見だらけの話をつらつらと

【書評】『世界システム論講義』~教科書の行間にあった一つの事実

 

 

読みました(久々)。
子育てが忙しく、なかなかままなりません。
育児休暇を取得しており、人よりは時間があるはずなのですが。。。
その話も、今度書こうかなと思います。

さて表題の本です。

『近代は「国」単位で見てはわからない。世界史の見方が変わる!』

どうも元は、放送大学の講義らしく、本の中身も割とアカデミックな内容になっています。
本の帯にはこう書いてあります。
『近代は「国」単位で見てはわからない。世界史の見方が変わる!』


まさにこの通り、国を単位として歴史を見る「一国史」観は、その歴史を正しく伝えていません。
というのも、海洋交易が可能になった近代においては、世界の国々は相互に関りを持つゆえ、単独において語れないからです。
つまり、世界の国々は各個としてあるのではなく、地球(グローブ)において、一つの生態系を構築するシステムの一つにすぎません。
これが本書のいう「世界システム論」です。

そして、このシステム論は、機械論的でもあります。
「A」に対して「B」というアクションを起こすと、「C」という結果になる。
こういう考え方です。

これを、先進国・後進国、という区切りに当てはめてみます。
先進国は何故先進なのか。そして後進国はなぜ遅れているのか。
勤勉と怠惰の違いなのでしょうか。

そうではなく、先進国(A)が、かつて植民地となった国々(B)に対して、搾取をしたから後進国(C)になった。
こういう視点から歴史を再認識するのが、世界システム論です。
(メモ:アメリカ合衆国における白人エリート支配層の保守派を指す造語であるWASP(ワスプ):ホワイト・アングロサクソン・サバーバン(郊外居住者層)・プロテスタント(英語: White Anglosaxon Suburban Protestant)は今なお幅を利かせています。しかし、元を辿ると、そのほとんどがイギリスでくいっぱぐれたどうしようもないクズ(原文より)ばかりであることが本書では分かります。または一つの流刑として、イギリス本土に置いておけない人間をアメリカ大陸で使役し、貿易による収益源とする、という一石二鳥の策も採られたようです。WASPの権威丸つぶれ。これを解き明かすのも世界システム論です。面白い。)

歴史は前後関係、世界システム論は因果関係

我々が学校で学んできた歴史は、文字通り、ヒストリーであり、物事の「前後関係」にすぎないのだと私は改めて感じました。
世界システム論でわかってくるのは、「前後関係」に「奥行き」が加わった「因果関係」です。

「歴史」という大局を見るときに、その行間に埋もれてしまう因果関係の事実。
これを洗いなおす世界システム論はなかなか面白いものだと思います。

考えてみると、「歴史」というテーブルに乗せると、つい因果関係が見えづらくなってしまいますが、我々がリアルタイムで見ているニュースなどは、因果関係の塊ですね。
北朝鮮情勢しかり、政治の派閥争いしかり。

ただ、惜しむらくは、私が歴史が苦手、というところでしょうか。
この本を存分に楽しむには、歴史が好きであることが必要条件な気がします。
購入の前には再考してみてください。
そして、読むとこの書評がいかに的を射ていないかがよく分かると思います。
ええ、斜め読みしました。
ゆえに書評も、本の表面をなぞるのみです。