シコウノイッタン

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【書評】『社会保障入門』~身近なようで結構遠い~

社会保障入門 シリーズ ケアを考える (ちくま新書)
 

 

読みました。

 

なんとなく漫然と支払っている我々の税金は、いったいどのような形で還元されるのか(もちろん、その使途は社会保障だけではないけど)。

そういう、ある意味知ってて当たり前だけど、多くの人が詳細まで知らないのが社会保障制度。 

それらを、入門と銘打ちわかりやすく解説しようという本でした。
 

 

 ▼たしかに入門なんだけど…

 本書の一番のセールスポイントは、社会保障と呼ばれる、年金、健康保険、児童手当、障害福祉生活保護の制度について、アウトラインだけでもまんべんなく知ることができることでしょう。

こういうのは、当事者にならないとなかなか知る機会がありませんが、どこかで絶対に当事者になるわけですから(そのために国民全員から徴収するわけで)知っておいて損はない知識です。

あと、社会保障制度の変遷についても結構触れられていまして、特に若い世代なんかは、これから年金がどうなる、なんてことも知る機会になるでしょう。

まぁ総論として、国は、給付抑制の方向に動いているので、知ったところで、何よりも「自衛」が大事なのは間違いがありませんが。

 

一方で、文章にはあまり魅力がありません。如何にも学者さんが書いた本という感じで、わかりやすくしようという意思はかろうじて感じますが、硬い。固い。

読んでて決して面白くはないと思います。
その辺が、私はちょっとしんどかったですね。


▼ 政権批判も含んでちょっと読み心地も悪い

あと、社会保障関連をガンガン切り捨てた安倍政権が嫌いなんでしょうね。そういうヘイトを文章の端々に感じて、安倍さんが好きであろうがあるまいが、何となく心地の悪い文章になっています。
事実、私も安倍政権、というか自民党政権はどちらかといえば否定的な立場なんですが、そんな私でも、なんだかこの書きぶりは気になる。
あと、( )書きの文章の末尾にやたらと「!」をつけるのですが、癖なんでしょうか。
編集の意図が読み取れません。
本書は、基本的に、社会保障制度について淡々と語る、というテイストなんですが、突然「!」をつくと、そこに主観的なものを感じ取らざるを得ません。
このあたりが、読み手である私を大いに惑わせました。

 

 ▼社会保障を手厚くするのは理想だけども

 まぁ、そんな私の戸惑いはさておき。
本書は全体として、「社会保障については、抑制ではなくもっともっと手厚くして、憲法25条の趣旨を存分に実現できるよう、国は注力すべきだ」、という結論を導きだしていています。 

その結論は当然間違ってはいないのですが、そうなると、福祉特化の社会なので、北欧並みに消費税やら何やらを上げざるを得ないような気がして、私としては正直気が気でありません。

加えて、日本の政治は、なぜか決まって約束を反故にして、税を正しい使途に使わなかったりするので、税が上がったところで、その分の還元がきちんと成されるかどうかは非常に不安であります。
税金だけ上がって還元されない。結構あると思います。

 

本書は入門ということなので、基本的な制度の説明に終始し、財源の話を端折っているのですが、いかんせん、書いてあることだけ読むと、ないものねだりをしている印象が残ってしまって、よろしくないですね。
その辺の根拠も示してほしかった。

 

ともあれ、この国の人口動態を見ていると、あんまり明るい兆しはないですし(ひょっとすると2040年くらいから老人が減るので収支改善に向かうかもしれませんが)、「それが出来る人間は基本的に社会保障に頼らなくても良いようにリスクヘッジに努めるべき」、というのが私の結論です。
まぁ、これは主に年金の話なんですけど。

なんか大分ディスってしまった気もしますが、お勉強するには良い本ですよ。面白くはないけど。

 

さて、また明日から頑張って納税しますかね。
皆を支えます。

 

 

社会保障入門 シリーズ ケアを考える (ちくま新書)