シコウノイッタン

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【書評】『現代語訳 史記』~孔明の罠で原文が読みたくなる~

▼私の青春? 横山光輝

小学生の頃、転校したてで、全然友達ができなかったときに、横山光輝作品を読み漁ってました。
三国志』はもとより、『水滸伝』、『項羽と劉邦』…などなど、横山光輝が私の原点みたいなところ、あると思います。
でも、数ある作品の中でも、『史記』が大好きでしたね。

さて、前置きが長くなりましたが、読みました。


この本はとても読みやすいので、私のように全ての原文にあたったことのない人でも楽しんで読めるはずです。
(ただし、膨大な史記を全て現代語訳してるわけではないのでご注意を。あくまで、有名どころのエピソードが中心。)



▼エディターとしての司馬遷を考える本

ところで、『史記』が人々を引き付ける理由は、物語そのものはもちろん、登場人物の生き様、またそこから見えてくる教訓などにあると思われます。
ただし、そういう魅力に触れたいのであれば、わざわざこの本は読む必要がないでしょう。
正直、それは横山光輝の漫画でもいいですし、最近私が「kindleUnlimited」で一心不乱に読みふけっていた、これらの作品でも、その魅力は十分に味わえると思います。(kindleUnlimitedの漫画はイマイチなものも多いですが、これは普通に楽しめる)

この本のミソは、「『史記』という書物に、なぜこの人が選ばれたのか」という、エディターとしての司馬遷の視点を大事にしていることです。
話そのものにフォーカスする、という視座を脱却し、司馬遷の視点やその技巧など、より俯瞰的に『史記』を分析することで、従前の楽しみ方とは別の見え方を与えてくれます。
故に、読者の『史記』感に奥行きを与えてくれる、そんな本になっていると思います。

作者はキーワードとして「登場人物のキャリア」という言葉を挙げています。
史記』に名を残した人たちが、どういう立ち位置で、どう立身出世していったのか、そしてその生き様の魅力とは何か。
こういった少し変則的なアプローチで、『史記』を楽しんでみるのは一興です。気になった人は読んでみるといいと思います。
抄訳ですが、登場人物は多種多様です。武芸に優れたものもあれば、策略に富んだものもいる。義侠の徒もいれば、復讐鬼もいる。一芸に秀でたものもいれば、口先三寸でのし上がるものもいる。
有名な話も多いとは思いますが、本書を読むと、これまでとは少し見え方が変わってくるはずです。

さてさて、本書は2時間もあれば読めるので、通勤・通学のお供にどうぞ。
このライトな読後感、嫌いじゃありません。

そして、読み終わったころには、原文に当たりたくなっていること間違いなし!

なんか回し者みたいになってしまいました。