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素人と落語と書評

落語や社会のはなしなど、つらつらと

ビル・ゲイツがビッグヒストリープロジェクトを推進する理由【サピエンス全史を読んで】

  先日、広島大学の長沼毅教授のビッグヒストリーに関する講演を聞く機会があり、非常に意義深い話を聞くことが出来ました。 

ビッグヒストリー われわれはどこから来て、どこへ行くのか――宇宙開闢から138億年の「人間」史

ビッグヒストリー われわれはどこから来て、どこへ行くのか――宇宙開闢から138億年の「人間」史

 

 ビッグヒストリープロジェクトは、統合的な歴史学として認知が進んできていますが、その推進に、慈善活動家であるビル・ゲイツが全面的に関わっています。

ゲイツ新興国などにもネット環境などを整備し、どこの国でも、どんな環境でも、多用な人々が、このビッグヒストリーを学ぶ機会を提供しようとしているそうです。

学問になぜ、ゲイツは巨額の私費を投じるのか?
それは、シンギュラリティ、バイオテクノロジー等々、我々の倫理観や価値観を今後根底から覆すであろう概念に、人類全体の知を結集して立ち向かおうとしているからだそうです。 

この話を聞いて、私は本当にゾクゾクしました。
我々の意思を飛び越えて進む技術領域の躍進と、人類知の対立による総力戦。こんなものを既に想定しているゲイツの洞察もそうですし、新しい歴史の胎動を私はおぼろげに感じ取ったのでした。


で、長沼教授も講演の中でちらっと例に挙げたビッグヒストリー関連本、「サピエンス全史」を手にとってみました。

 

サピエンス全史 上下合本版 文明の構造と人類の幸福

サピエンス全史 上下合本版 文明の構造と人類の幸福

 

 内容としては、歴史の本、というよりも哲学的な要素を多分に含んでいる印象です。
人類が類まれなる栄華を掴んだのは、その想像力や思考の幅広さであること。そしてその過程で切り捨ててきたもの(人間のせいで絶滅した生物や、過去の残虐な行い)を、巨視的な視点で提示してくれます。

我々の幸せは、ホルモンの働きであると喝破したり、ある意味構造主義的なアプローチも含みつつ、本書では我々人類の本当の姿を紐解いていきます。


そして、下巻の最後、こここそが本書の本丸で、「超ホモサピエンス」について触れています。
今後、技術革新が進むなか、クローン等の生命倫理、AIとの共存など、新しい価値観がどんどん突きつけられていきます。それらが進みきった先の我々の姿は本当に「ホモサピエンス」と言えるのか?
技術がすさまじいスピードで進化していくなかで、我々の価値観・概念の醸成はあまりにも拙速です。何をしたいのか、何に向かって進んでいるのかもわからない人類に、一方的にAIとの共生や果ては電脳などの問題が持ち込まれてくるわけです。
正直恐ろしい話です。
著者は最後に、そうした問題に対して警鐘を鳴らします。
少しだけ引用したいと思います。

唯一私たちに試みられるのは、科学が進もうとしている方向に影響を与えることだ。(中略) 私たちが直面している真の疑問は、「私たちは何になりたいのか?」ではなく、「私たちは何を望みたいのか?」かもしれない。


私たちは、絶大な力を持った、最早、神と呼べる存在に近づきつつあります。一方で、その目的も進む方向もよく理解せず、他の動物を駆逐し、環境を破壊し、人間至上主義をひた進んでいま
す。
作者いわく「自分が何を望んでいるか分からない、不満で無責任な神々ほど危険なものはないではないか」と。

サピエンス全史というタイトルは、
(
とりあえず今日まで分かっている)サピエンス全史ではなく、サピエンスの終焉を意味しています。

我々はサピエンスを通り越し「何か別の生き物」になる転換点に、今差し掛かろうとしているのかもしれません。

 

 


っていう内容は割りと

 

いま世界の哲学者が考えていること

いま世界の哲学者が考えていること

 

 この本とだだかぶりでした。

両方とも面白いですよ。

長くなりました。以上です。